和順は騰衝県の辺境にある小さな町村だ。ここの気候は温和で、山紫水明、優雅で素朴、小橋に清流が流れる、まるで江南の様だ。しかし、こんなに素敵な場所なのに、今世紀初頭までずっと、まったく有名ではなかったのである。

世界の騰衝、天下の和順。2005年和順は“中国十大魅力名鎮”の称号を獲得し、首位を獲得し、正真正銘の中国で第一位の名鎮となり、現在、世界中の人達に知れ渡った。和順は雲南省第一の僑郷で、風光明媚、人文教養があり、重厚な歴史文化がある。なぜなら、独特な自然風景と小さな町が外部に知れ渡ってから、毎年たくさんの人々が和順に観光旅行に訪れるようになり、この場所に引き込まれていく。食事も人々が関心を持っている話題の一つだ。ご当地の“頭脳”（※一種の滋養強壮面）や稀豆粉（※細いところてんみたいなデザート）は独特で特色のあるご馳走だ。他にもおいしい食べ物がある、日頃よく見かけるが、賞賛の止まない、それこそ松花餅だ。

松花餅を知る前まで、私は松花粉は聞いたことがあったが、たいへん高価な物だという印象を持っていた。松の木の雄花のやくから収集した花粉で、人の手で採取し、栄養食品を製造して直売し、松花餅は絶対に珍しいものだと想像させた。たったこれだけの松花餅が作られるのにどれだけの量の松花粉を使っているのだろうか！どうりでこんなに人気があるわけだ。

とは言うものの、松花餅はそうたいそうなご馳走と言うほどのものではなく、一種の天然松花粉を使用して、あずきと一緒に作ったお菓子だ（もちろんだいずを使用したものある）。松花粉は、科学界では天然食品の王様と称されており、栄養が豊富で、タンパク質の含有量が牛肉や卵の七倍あり、しかも遊離アミノ酸として存在しており、容易に消化吸収される。松花粉は様々な病気に対して不思議な効能を持っている。これらの花粉を常食していると、貧血、脳の働きの疲れや乱れ、幼児の大脳の鈍さ、毛細血管の強度不足に効果的だ。さらに筋肉や骨を強靭にし、労働持久力を高め、食欲を増進し延命長寿の効能がある。松花餅は、一番上の一層が分厚い黄色い天然松花粉で、その上にゴマがまぶしてある。その下の一層には、焦げ赤茶色のあずきを砕いて作ったあんこが挟んである。さらにその下には黄色い松花粉とあんこがあり、一番下の層には餅粉の層が敷かれている。騰衝ご当地の人が作る松花餅は一枚一枚丹念に作り上げてある。各一個が大体30×60センチ前後で、それを小さなナイフで３×３センチに小さく切り分け、一つ一つ5ミリ程の厚みがある。松花餅は、底の浅い木箱の中にきっちりと並べられており、上には薄い透明プラスチックの蓋が被せられている。お客が買いに来た時に、売っている人が小さいアルミのヘラを取り出し、気をつけながら、慎重に数個取り出す。松花餅の新鮮さを保つために、主人は毎日一箱分しか作らず、売り切れればそのまま家に帰り、次の日にまた作って売っている。

和順で一番有名な松花餅は藺（リン）おばさんが作ったもので、テレビで数多く紹介され、和順古鎮の看板となり、各地から来る旅行客を引き付けている。和順古鎮に入り、ふと見渡すと、真っ直ぐな路と曲がりくねった路地、深緑の石道、古民家の棟々、心温まる家屋、静かな庭、橋の下を流れる小川、昔ながらの風景だけが見受けられる。旅行客は大変多いが、地元の人たちはいつものようにのんびりとした農村生活をし、外界に侵されていない。露店があれば、お店もある。観光客は藺（リン）おばさんの餅を探すが、門があるわけではない。洗濯する場所には松花餅を売っている場所が沢山あり、たくさんの人たちが当たりを探すが見つからない。人に尋ねて、場所を探し出し、竜潭のそばでの小さな押し車の露店で、おばさんがニコニコしながらそこに立っている。松花餅はとてもかわいく、正方形をしており、黄身のような色している。一つ一つ精巧に作られていて、一口で食べてしまうのがもったいなく感じてしまう。新鮮な松花餅はとても柔らかく、一口で口の中に入ってしまい、しっとりとして香ばしく、唇でとろけ、かすかな松の実の香りが漂い、ほんのりと甘く、まるで満杯になった愛情が唇にあふれ出すかの様だ。消えることなく松花粉はナッツの風味があり、ほんのり甘く、艶やかで、口の中で溶け易く、歯や口の中に粘着ぜず、松花餅を食べ終わると、口の周りに黄色い粉末がくっつく、それを舌先を伸ばして軽く舐め、隔世の味を再び味わう。次また来こよう－－次とは言うもののそれがいつになるのかは分からない、松花餅は、あなたに久年の思い出を残す。